二項分布の期待値を求めてみる(導出してみる)
二項分布に関連する記事は、これまでいくつか書いてきました。今回は、二項分布の期待値を求める方法について解説します
確率変数Xが二項分布に従うとき、Xの期待値と分散は以下のようになります
期待値
$$ E[X] = np$$
分散
$$V[X] = np(1-p)$$
二項分布とは
二項分布とは、確率がpのスロットをn回まわすといった問題の確率分布です。
まずn回中k回当たる確率は、以下の式で定義されます。
$$
p_k = {}_n\mathrm{C}_k\cdot p^k \cdot (1-p)^{n-k}
$$
二項分布は$B(n,p)$という形で表現します
期待値を求める
今回は、この二項分布の期待値を求めてみます。
期待値$E[X]$は、その定義から、以下の式になります。
$$ \begin{eqnarray} E\left[X\right] &=& \sum_{k=0}^{n}k\cdot p_k \\ &=& \sum_{k=0}^{n}k\cdot {}_n\mathrm{C}_k\cdot p^k \cdot (1-p)^{n-k}\\ \end{eqnarray} $$
かなり複雑ですが、これを頑張って変形して行きます。
以下は変形に必要な予備知識です。
$$ k\cdot {}_n\mathrm{C}_k=n \cdot _{n-1}\mathrm{C}_{k-1} $$
これは、愚直に展開すれば簡単に(?)に証明できます。
$$ \begin{eqnarray} k\cdot {}_n \mathrm{C} _k &=& k \cdot \frac{n!}{k! \left(n-k \right)!}\\ &=&k \cdot \frac{n \cdot (n-1)!}{k \cdot (k-1)! \left((n-1)!-(k-1) \right)!}\\ &=&n \cdot \frac{(n-1)!}{((n-1)!-(k-1)!)}\\ &=&n \cdot _{n-1} \mathrm{C} _{k-1} \end{eqnarray} $$
では、期待値の式を変形して行きましょう。
ところで、$k=0$のとき$k\cdot p_k=0$です。
なので、k=1からに変形しても結果は同じなので、以下のように式を書き換えます
$$ \begin{eqnarray} E\left[X\right] &=& \sum_{k=0}^{n}k\cdot {}_n\mathrm{C}_k\cdot p^k \cdot (1-p)^{n-k}\\ &=& \sum_{k=1}^{n}k\cdot {}_n\mathrm{C}_k\cdot p^k \cdot (1-p)^{n-k}\\ \end{eqnarray} $$
先ほどの公式(予備知識)を使えば以下のように変形できます。
$$ \begin{eqnarray} E\left[X\right] &=& \sum_{k=1}^{n}k\cdot {}_n\mathrm{C}_k\cdot p^k \cdot (1-p)^{n-k}\\ &=&\sum_{k=1}^{n}n\cdot _{n-1}\mathrm{C} _{k-1}\cdot p^k \cdot (1-p)^{n-k}\\ \end{eqnarray} $$
ここで、再び$k=0$からに戻します。
$$ \begin{eqnarray} E\left[X\right] &=&np \sum_{k=0}^{n} {}_{n-1}\mathrm{C} _{k-1}\cdot p^{k-1} \cdot (1-p)^{(n-1)-(k-1)}\\ &=&np(p+(1-p))^{n-1}\\ &=&np \end{eqnarray} $$
最後の変形は以下の二項定理を使っています。
$$ (x+y)^n = \sum_{k=0}^n {}_n \mathrm{C} _k x^k y^{n-k} $$
以上で期待値が$np$までたどり着きました。分散も似たような方法で計算可能ですが、ここでは省略します。
丁寧にやれば自力で$V[X]=np(1-p)$までたどり着けるかと思います。。
ちなみに、1回の施行の期待値が$E[X]=p$でn回なので$E[nX]=nE[X]=np$と考えてもよいみたいです。